そしてついに

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希さんは結婚願望はないと言っていたし、私がいる限り恋愛は考えられないと言っていた。それが本音だということは言葉だけじゃなく態度でも分かる。私がしっかりしていれば希さんは私のそばにいてくれる。 だから、恋愛感情なんか抑え付けて希さんをそばで支えて行きたい。恋心なんて一時的なものだ。先を見据えれば大して重要なことじゃない。 「い、いらっしゃいませ……!」 「すみません、カンパニュラってありますか? ピンクのが欲しいんですけど」 「あ、それでしたら……、こちらです!」 最初は怯えた子羊だった神尾氏も最近はずいぶん頼もしくなった。真面目で努力家の彼はどんどん成長している。 「あ、これです。ありがとうございました」 「こちらこそ、いつもありがとうございます!」 ちょっと前に新しく入った女の子の影響もあるのかも知れない。あの頃から目に見えて頼もしくなった気がする。 「最近神尾くん人が変わったわよねぇ……。やっぱり後輩の影響かしら?」 「それもあると思いますよ。元々真面目なのが大きいと思いますけど」 「いいことね。若手が増えて店に活気が出たわ。時代は変わって行くのね……」 店長がちょっとしょんぼりして見えるのは気のせいということにして、とにかく私も神尾氏に負けないように頑張らなくてはならない。いや、頑張ると怒られるからほどほどに力を入れなければならない。 まずやるべきことと言えばやっぱり優衣のこと。いつまでもコソコソと希さんに隠し事をしたままではダメだ。優衣との関係にきちんとけじめを付けて強い女にならなければ。 『今電話していい?』 その夜、初めて自分から優衣にメールを送った。思った通りなかなか返信は来ない。前回会った時のいきさつもあって、私からの急な連絡に警戒しているのだろう。 そして深夜0時過ぎ。 諦めてそろそろ寝ようと思っていた頃、ようやく優衣からの返信が届いた。 『何の話?』 察しは付いているのだろう。電話OKの返事はしてくれなかった。 『この前はっきり伝えられなかったから』 『メールじゃ駄目なの?』 やっぱり優衣は電話することを許してくれない。気持ちが分かるだけに少し辛かった。でも私だってここで引き下がる訳にはいかない。
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