退化

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退化

 ※レモンはスラングでクズを意味する。  ポンテローザ・別府  新居浜署組織対策課・警部補  普通サイズの3倍の大きさのジャンボレモン。オオミレモンとも呼ばれる。ごく僅かであるが日本国内でも流通するようになった。酸味はややマイルド。ゲップをよくする。  デブ    リスボン刑事・村上  大洲署会計課  主力品種の1つ。樹勢が強く、豊産性の品種。枝は直立方向に伸びるため、大木になりやすい。トゲがやや多い。1917年に南カリフォルニアのリバーサイドで開発され、1950年ごろに市場に出回るようになった。日本ではブランド名の「サンキスト」でも知られている。カリフォルニアの内陸部や広島県で栽培されている。耐寒性・耐暑性に優れる。多汁で香りの強い品種である。  ユーレカ刑事・来島   宇和島署盗犯課課長  主力品種の1つ。シチリア原産。樹勢はレモンの中ではやや弱い方。開張性でトゲは比較的少ない。リスボンより耐寒性がやや弱いとされているが品質は高く評価されており、カリフォルニアなどで多く栽培される。    ビアフランカ刑事・平岡  シチリア原産。トゲなしレモンとして苗が売られている。果実の品種特性はユーレカに近い。他の柑橘類でよく見られる晩秋の異常落葉が少ない品種である。ユーレカが開張性で枝が横に広がる性質があるのと比べてビアフランカでは枝は垂直方向に延び易くなる性質がある。日本へは戦前に広島県に導入され、生産量も増えて主力品種となっている。  ジェノバ刑事・土居  日本では知名度の低い品種であるがチリなど南アメリカで主に栽培されている品種。日本に輸入されるレモンのうち6割程度がアメリカ産だが、チリ産レモンは約3割を占める。種が少なく果汁は多い品種。 子供がいない。独身  河野署長(警視正) 新居浜署  1998年10月、愛媛県宇和島市内で民家から貯金通帳などが盗まれ50万円が引き出される窃盗と詐欺の事件が発生した。被害者愛川宅に荒らされた様子がないことから、親しい人物の犯行との見方を強めて捜査。  来島は宇和島署の盗犯課課長だ。 「アメ公が空売りしたせいで倒産が相次いでんな?」  来島は10年ほど前に警視庁捜査一課にいた。『アメリカンジゴロ』に憧れてイタリアンブランドで決めていた。  だが、当時の管理官(警視)に『君ってセンスはいいけど訛ってるね?』って言われたので必死で標準語を覚えた。 「いんでこーわい」「かえってこーわい」 →「帰宅させていただきます」「かえります」 「橋本首相はダメでやったな?」  清河辰夫(きよかわたつお)が意見すると、「タツ、おはんに言われたらおしまぞな?」と鼻で笑った。  1999年2月、愛川(あいかわ)宅のかぎを持って自由に出入りが可能だった、忽那正則(くつなまさのり)(51歳)を追及した際、犯行を認めたため逮捕した。  正則の自供によると1998年10月上旬に約50万円の貯金通帳を、12月下旬に印鑑をそれぞれ盗み、これを使って1999年1月8日に市内の金融機関から50万円を引き出し、その金で借金計20万円を返済したとあった。男性の他の使途などを加えると約50万円になり、引き出した金額とほぼ一致するとして、「金銭目的の犯行」と動機を特定して、検察は正則を起訴した。  松山地方裁判所における公判では正則は無罪を主張した。借金返済について、正則が勤務していた会社の女性事務員、戸田麻友(とだまゆ)が返済は1月7日と証言し、内12万円は1月7日付の「振替伝票」が残っていた。  盗んだ通帳で引き出して借金を返したとされていた日が実際は引き出しの前日(1月7日)だったことが明らかになった。  また、正則は1998年末にボーナスと給与や年末調整で手取り70万円余りを受け取っており多額の現金を所持していたことも判明した。それに対し、検察は公判で「忽那が金に困っていたことに変わりはない」と主張した。  2000年になって、高知県で窃盗罪で公判中の60歳の連続窃盗犯、津田寛(つだひろし)が手帳に犯行メモを残していたことが判明し、宇和島の窃盗事件について自供。  その後、金融機関の窓口で応対した職員、リーゼントヘアの志村(しむら)が「犯人である」と証言や荒らされていなかった被害者宅については施錠されていなかった2階の窓から侵入したことが判明し、捜査による証拠は宇和島の窃盗事件が高知で逮捕された連続窃盗犯、津田の犯行の可能性が濃厚となった。  4月1日、高知の連続窃盗犯、津田を宇和島の事件に関し窃盗罪などで追起訴した。  裁判では、被告人となった忽那正則は容疑を否認していたが、検察側は論告で懲役2年6月を求刑しており、2000年2月25日に判決が下されるはずであった。しかし、冤罪が明白になったため釈放され、検察が結審後に裁判所へ改めて審理再開を要請して論告放棄する異例の展開をみせた。  警察のずさんな誤認捜査が判明したにも関わらず、愛媛県警は「捜査自体に違法性は無かった」として、担当の来島警部を処分しないことを発表。松山地検も「起訴に法的な誤りは無かった」と強調し、警察・検察のどちらも責任をとろうとしなかった。  忽那正則は刑事補償を請求をし482万5000円が交付されたが、勾留中に失職したことなどを理由に、国と県を相手に慰謝料など約1000万円の支払いを求める国家賠償請求訴訟を起こす。裁判では県が500万円と国が100万円の計600万円の和解金を正則に支払うことで和解となった。  2000年6月1日  来島はレストランに入ってお子様ランチを頼んだ。🇦🇩の旗を嬉しそうに見つめてる。旗をコレクションにしている。  宇和島署盗犯課の新人刑事、旗村洋次(はたむらようじ)はレストランに入るなり来島を見つけた。来島はテディベアの頭を撫でていた。 「可愛いでちゅね〜?」  旗村はおぞましさを感じた。 「あぁ、洋次く〜ん?こっちに来ればいいじゃないか?」 「失礼いたします」  旗村は来島に向かい合って座った。 「おもちゃ屋でプラモデルが盗まれました」 「僕は子供なんだから難しいことは分からないよ」  旗村には5歳になる健太って息子がいるが、来島は健太より手がかかる。  レジの順番は守れない。  先頭に並んでた少女が「順番守ってよ!?」って怒ってる。 「宇和島署の来島でちゅ!僕は忙しいんでちゅ!」  健太の弟、健二は2歳で公園に行ってもトンネルとか集団で作れない。  来島のレベルはその程度だ。  6月2日  来島は風邪になった。普通なら自家用車なりタクシーなりで病院に行けるが?退化していることもあり、母親に電話をした。  来島は40歳、母親は70近い。 「ママ、僕ね具合悪いの?病院に送ってよ?」  母親、道子(みちこ)は息子の異変に気づいた。  来島は岩松川沿いの昭和っぽい通りのアパートに住んでいた。西村酒造の酒蔵や屋敷、大畑旅館がすぐ近くにある。  岩松川はしらうお漁で有名だ。  道子はお粥を作ってあげたり、桃を食べさせたりした。 「ケイちゃん大丈夫ぞな?」  道子は体をさすってやった。  来島の本名は来島景三郎(くるしまけいざぶろう)という。 「ママ、ありがとう」  
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