02.鍵山千春

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 図書室の施錠をして、放課後の廊下を歩いていた。背後にその子のぺたぺたとした足音を聞きながら。  ひなたは饒舌で、思いついたことを次々喋る子供みたいな節があるのだが、この日はいやに静かだった。  それだけに、嫌な予感がしていた。 「千春ちゃん」  呼ばれて振り返ると、ひなたは泣いていた。  直感的に、私が原因なのだろうだと思った。  宮城と話していた時、あの時もいつものように図書室に、ひなたはいた。  ひなた以外の人間に笑顔を向けたのは初めてだった。見られていたのだろう。 「千春ちゃんがいないと生きていけない。ずっとそばにいてほしいの」  泣かせてしまったなあ、と、罪悪感で胸が引き裂かれそうになった。 「私も。大丈夫、宮城はそういうんじゃないから。私にはひなただけよ」 「…ごめん…千春ちゃんが遠くなった気がしちゃったの、ごめんね」  泣きじゃくる彼女の手を取り、繋いだ手の親指を撫でた。  この子は私を必要としている。この子を必要としているのは私もまた同じだ。  友情よりも濃いなにか。  かといって愛と呼ぶにはあまりにも複雑すぎる。  強固に見えて、私達を繋ぎとめているのはもっと儚く脆いもののように思えた。
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