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図書室の施錠をして、放課後の廊下を歩いていた。背後にその子のぺたぺたとした足音を聞きながら。
ひなたは饒舌で、思いついたことを次々喋る子供みたいな節があるのだが、この日はいやに静かだった。
それだけに、嫌な予感がしていた。
「千春ちゃん」
呼ばれて振り返ると、ひなたは泣いていた。
直感的に、私が原因なのだろうだと思った。
宮城と話していた時、あの時もいつものように図書室に、ひなたはいた。
ひなた以外の人間に笑顔を向けたのは初めてだった。見られていたのだろう。
「千春ちゃんがいないと生きていけない。ずっとそばにいてほしいの」
泣かせてしまったなあ、と、罪悪感で胸が引き裂かれそうになった。
「私も。大丈夫、宮城はそういうんじゃないから。私にはひなただけよ」
「…ごめん…千春ちゃんが遠くなった気がしちゃったの、ごめんね」
泣きじゃくる彼女の手を取り、繋いだ手の親指を撫でた。
この子は私を必要としている。この子を必要としているのは私もまた同じだ。
友情よりも濃いなにか。
かといって愛と呼ぶにはあまりにも複雑すぎる。
強固に見えて、私達を繋ぎとめているのはもっと儚く脆いもののように思えた。
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