03.友達と恋人の境界線

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03.友達と恋人の境界線

 あれから鍵山はたまに私を昼飯に誘うようになった。  鍵山は質素な弁当、大森はかわいらしい弁当、私は決まってコンビニで買ったパンだった。  この場では学生らしく勉強の話をしたり、2人の他愛ない会話を聞いたりしている。  私はこの時間に歌子のことを相談するようになっていた。 「恋愛って友情と違いがわからなくない?」 「友達いないのに違いとかわかるの」  鍵山の私の扱いは依然ひどいものだった。  しかし乾いたものの言い方をするからか特に傷つくことはなかった。事実だし。 「いや…人生の中で一切友達いなかったわけじゃないし」 「ふーん」  めちゃくちゃ興味なさそう。 「でも、恋人さんはしのちゃんのこと大好きなんでしょう?」  大森はいつも親身になって話を聞いてくれる。  彼女は私にとっての”理想的な女の子”そのものだった。  ふわふわの髪の毛に屈託のない笑顔、無邪気で、誰もが愛おしく思うような女の子。  彼女の弁当を見ていて思う。幸せな家庭で、目一杯の愛を注がれて育ったんだろう。 「好きなのかどうかすらわかんない。なんか遊ばれてる気がする」 「恋愛と友情の違いは触れたいか触れたくないかだと思うけど」  鍵山が言った。 「キスしたりとか」  そう言われて以前、車の中で歌子にされたことを思い出した。少なくとも歌子は私に恋愛感情とやらがあるのだろうか。  それに対して私はどうだろう。歌子に触れたいかどうか。あの時嫌だったかどうか。  もう、それすらもわからなくなっていた。  というか、あれから歌子はバイトが終わると私を家まで送ってくれるのだが、そういうことをされたのはあれ以降ない。  そして私は歌子におちょくられている可能性もまだ捨てきれないでいた。  教えてあげようか、という言葉も私の心にわだかまりを残す理由だった。 「でも、私達は恋人じゃないけどキスするよね」  大森は鍵山に向かって無邪気にそう言い放った。  おや…?と思い、鍵山の顔を盗み見た。 「そうだね」  微笑んでいるが、どこか寂しそうだった。  そういうことか。いやどういうことだ?  この2人の関係はわからないことだらけだった。
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