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残明
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カジノの景品表にざっと目を通す。レートの低いものから順々に挙げられているものを見ていくと、細々とした菓子や小物、日用品から拳銃、銃火器、傭兵依頼だの娼婦手配だの、果ては戦車、建物、国家機密の情報まで書かれていた。
私はそれを置いて、目の前の男に尋ねた。
「それで、ロドルさんと申しましたか。――その、ここの『景品』についてですが、これに書かれているもの以外でも、問題ないんですか」
彼は低く笑って、いやに粘度の高い視線を私に這わせてきた。
「えェ、もちろん。ないものを強請られたら、私たちのできる限りいくらでも『調達』しましょう」
「例えそれが、人間でも?」
「単純にヒトが欲しいだけなら、もっといい場所がありますよ」
そうして、嘲るようにけたけたと笑い始めた。子供のような笑い方だ。暗い場所であるためか年齢は推測しがたいが、四十ほどか。そのアンバランスさが途方もなく気持ち悪かった。
「それで、何が欲しいんですか?」
私は背中に怖気を感じながら、切り出した。
「人間の目の交換レートを知りたい」
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