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「じゃあさ、彼女と一緒に昼食べたり、一緒に帰ったり、放課後デートしたりする?」
陽は真剣な表情で隼人の顔を覗き込む。
隼人は一瞬目を泳がせて、「するだろ」と答えた。
「……」
「どうした」
「や、なんでもない……」
思わず伏せてしまった陽の顔は、なんでもないという顔ではなかった。
思考回路が停止するとこうなるんだ?という真顔具合だった。
一つはっきりしているのは、隼人の答えにショックを受けて愕然としているということ。
理由は明確。
帰りはともかく、昼ご飯も放課後も、その時間の隼人は陽と一緒にいることが多かったからだ。
しかし隼人はただの幼なじみだ。
気が合う、合わないは別として、最早兄弟みたいな間柄。
彼女の存在一つでこんなにも心をかき乱されるものだろうか。
何故かそこを突き詰めてはいけない気がして、心の隙間から漏れてしまいそうなもやもやに蓋をした。
二人の歩く先に校門が見える。
あと少し。中へ入ればクラスが違うので教室ももちろん別々だ。
「今日さ、もし空いてたらこないだやったゲームの続き……」
「橘くーん!おはよーっ!」
陽は無意識に、今日の放課後、隼人を自分の部屋へ誘おうと口を開きかけたその時、隼人を呼ぶ女子の声で言葉を失った。
間違いなく、あれは隼人の彼女。
身長は恐らく陽より少し低いくらいのショートカットヘア。
すらっとした手足のボーイッシュな女子だった。
はっきりとした目鼻立ちでいかにも女らしい可愛さではなく、爽やかな可愛らしさの女子だった。
─隼人ってあぁいうのが好きだったのか?
湧き出る疑問。
─……俺の方が全然可愛い。
湧き出る対抗意識。
─なんか、ムカつく!!!
そしてメラメラと燃え上がる怒りにも似た感情。
彼女はたたっと小走りにこっちへやってきて、さも当たり前のように隼人の隣に並んだ。
そして再び隼人におはようの挨拶をして、今初めて陽に気付いたような顔を見せてからにっこりと微笑んだ。
「あの、はじめまして。私、5組の大和友美(ヤマトトモミ)です。橘くんとお付き合いすることになって。よろしくお願いします」
隼人の彼女は、名前がちょっとカッコいい、非常に感じのいい子だった。
「あ~そうなんだ。こちらこそよろしく……」
彼女は陽と一言交わすと隼人に話しかける。
「私邪魔じゃない?」
「いや別に。すぐ教室だし、こいつクラス違うし」
「そうだな。気にしないでいいよ、はは」
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