プロローグ

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プロローグ

「え?今なんて?」 ─いや、聞き間違いだよな? 陽(ヨウ)は首を傾げて聞き直す。 「だから、彼女できたって。何度も同じ事言わせんなよ」 「……本当に?」 「しつこい。嘘ついたって仕方ないだろ。黙っててもいずれバレると思ったからこうしてお前に話してんだけど」 「そ……、そうなんだ……?」 「そうだってば」 陽は幼なじみである隼人(ハヤト)をじっと見詰め、それが嘘ではないと確信したところで目を反らした。 「……」 束の間の沈黙。 陽の頭の中は真っ白だった。 何も考えられないというのは正にこのことを言うのだろう。 「なんだよ。おめでとうとかないのかよ。陽なら喜んでくれるんじゃないかって思ってたのに」 「え……」 ─喜ぶ?あぁ、それが普通の反応か。 「あ、そう……だな。めでたいこと……だよな。おめでとう、隼人」 祝福の言葉を口にしているのに、心がちっとも祝福してない。 陽は無意識に眉値をぎゅっと寄せていた。 「陽、すげぇブスな顔になってる。本当におめでとうって思ってるか?」 「は?ブス!?何言って…って、今はそんなことどうでもよくて。思ってる。思ってるよちゃんとおめでとうって!」 「何でケンカ腰?まーいいや。とりあえずそういうことだから。……つーか、お前機嫌悪いみたいだし俺帰るわ」 隼人は言いたいことだけ言うと、陽の部屋から出ていった。 いつの間にか自分より大きくなってしまった隼人の背中を、ドアが閉まるまで見送り、しんと静まり返った部屋で我に返る。 「……何、急に彼女って。は?隼人のくせに生意気!俺より先に彼女とか作ってんじゃねー!」 何だかよくわからない原因不明の怒りに任せ、床に落ちていた星条旗柄のクッションを握ってベッドの上に叩きつける。 「ダメだ、隼人に彼女なんて。……くそ、こうなったら邪魔してやる……!」 いつの間にか目尻に溜まった涙を手の甲で拭い、陽は良からぬ方へと思考を巡らせる。 幼なじみの彼女から幼なじみを奪還する計画が、今、正に始まろうとしていた。
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