愛しのポメラニアン

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「そうなんだ。ごめんごめん」  奈緒に相槌を打ちながら、広げたお弁当箱を片付けようとしたが、その前に奈緒に制されてしまう。 「えっ、いいよいいよ!一緒に食べようよ」 「そう?でも……」 「いいからいいから!ね、中根くん」 「もちろん。七村さん、部署違いでなかなか話す機会ないですしね」 「そうだよ!ね!」  二人に制され、多摩は「じゃあ……」と腰を下ろした。多摩は長机の端に座っていたので、二人もその横に奈緒、中根の順に腰掛ける。奈緒と中根は一緒にコンビニに行ってきたところらしく、中根が持っていたビニール袋からサンドイッチとジュースを奈緒に手渡した。 「ありがとう。ごちそうさま!」 「いいえ」  いや奢られてるし、と多摩はこっそり目を剥いた。無論二人ともいい歳の社会人なのだし、不自然というほどの不自然ではないのだが、やはり気になってしまう。多摩は二人の距離感を計りかね、これ以上微妙な関係性を目撃してしまう前にと、奈緒がサンドイッチの封を開けるとほぼ同時に口火を切った。 「そういえばね、会社近くのペットショップなんだけど、ちょっと前まで可愛い三毛のポメラニアンがいてさあ……」  何か喋らなければと話題を探したが、ほぼ会社と自宅の往復で日々を過ごしている多摩にとって目新しい話題といったら例のポメラニアンのことくらいだった。引きずってるなあ、と思いながら、可愛がっていたポメラニアンが買われていってしまったこと、近くの公園でそっくりの子を見かけたことを話す。ポメラニアン可愛いよね、犬派猫派、といった当たり障りのない会話展開を期待していた多摩だったが、二人は怪訝な顔で目配せをしあった。 「……え?何?」  そんなにまずい話題だっただろうか、と多摩は閉口した。
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