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それから私が泣き止むまで、先生は何も言わず、縁側でお茶をすすっていた。
泣き止んだ私に、もうひとつの湯呑みに入ったお茶をすすめて、先生は言った。
「そんな重く考えるような名前じゃねーと思うよ。お前、『明るい』って字の成り立ち知ってるか?」
「太陽と月ですよね」
「やっぱそう思ってたか。ちげーんだ、日へんは、太陽じゃねーんだよ」
「じゃあ、何なんですか?」
湯呑みに残ったお茶をぐいっとあおって、先生は立ち上がった。
「また今度な。今日はもう帰れ」
夕方の空はきれいを通り越して、禍々しいほどの赤紫に染まっていた。
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