その程度の光

15/32
前へ
/32ページ
次へ
 先生は部員一人ひとりに、名前まで書いて手本を渡した。  私の手本は、部員の中で最後に渡された。 「お前にぴったりの課題じゃねぇか」  先生の言葉に、私は曖昧(あいまい)に笑った。  この課題を、先生が私にぴったりだと言ったのは、たぶん、課題に出てくる「倫理」と私の名前の「りんり」の音が同じだからだ。  ただ、私はその言葉遊びを面白がれるような気持ちには、なれなかった。  ほとんどの部員は、二、三回練習しただけで、それを出展作品に決めた。部活だから、決まりだから出展しているだけで、入選を狙うつもりなど、もともと誰にもないのだ。  私は何度書いても、先生に 「お前、これで納得してる?」 と言われ、肯定することができなかった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加