その程度の光

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 私はおばあちゃんと暮らすために、ママの田舎に引っ越した。  パパとママにうるさく言われて、横浜市内で指折りの進学校に入ったのに、そんな私の努力は完全に無駄になった。引っ越した先の田舎で、おばあちゃんの家から通えて、転入生を受け入れている高校なんてひとつしかなかったからだ。  そこは、県内の可もなく不可もない成績の人たちが集まる、校則ばかりがやたらと厳しい高校だった。    校則だから、部活には必ず入れと言われて、どうでもいいので書道部に入った。  引っ越す前にしていた習い事の中で、いちばん興味がないのが書道だった。段位をとったらやめていいと親に言われ、とったとたんに親の離婚と、私の引っ越しが決まった。結果的に、親との約束は果たされたわけだ。  私が好きだったピアノは、この田舎では、習える教室なんてなかった。 「書道部の顧問は非常勤の先生だけど、見ればすぐわかると思いますよ。目立つ人だから」  おばさんを絵に描いたような担任が口にした『目立つ人だから』の言葉に、どこか軽蔑の色がにじんでいるのを、私は見逃さなかった。
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