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目立つ人、というのは本当だった。
一目見ただけで、あれが書道部顧問の六郷真介先生だとわかったのは、彼が袴を着ていたからだ。初めて見た日に彼が着ていたのは、くすんだ深緑の袴だった。
その日は新学期の初めての部活の日で、私は一年生がするのと同じように、先生に挨拶と、名前とクラスだけの自己紹介をした。
先生は隻眼だった。
「明光りんり、二年生ね。いい名前じゃねーか」
閉じたままの右目の瞼をわずかに弓なりにして、半分ばかにしたように笑った左目の奥で、刃物のような鋭い光が閃いた。
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