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あき美
ゆみ子がいない。
ゆみ子がいない!!!
「ゆみ子がいないんです!白いブラウスに緑色のカーディガンに赤いスカートを履いた5歳の女の子です!髪はおかっぱで黒くて、」
「お母様、落ち着いてください」
「足元は白いフリルのついたハイソックスで、靴はほら、今人気のブレザームーンのお団子二つ結びの主人公の靴で・・・」
「お母様、落ち着いて!わかりましたから!」
大声を出した女の顔を見る。白いファンデーションが皮脂から浮き出ており、口紅はどぎつい赤で輪郭もしっかりなぞっている。プレートには「川村」と書かれている。年齢は40代半ばか。
サービスカウンターの業務はかなり手練れているように見えた。
「ゆみ子はかけがえのない一人っ子で、」
「分かりました、分かりましたから・・・」
そういうと川村は私の肩に、そっと右手を置いた。
「放送を流します、もう一度特徴教えていただけますか?」
「緑色のカーディガンで、赤いスカートで・・・」
川村は胸元のボールペンをとりだすと、その場にあった紙にメモをとりはじめた。
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