序章

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序章

 冷たい秋風が頬をつたう中、僕は路地の真ん中に立った。幼い頃から剣の鍛錬を続けてきたのはきっとこの日のため。心臓の鼓動は徐々に高鳴り、手甲や脚絆には汗が滲んできているが、怖気づいている場合ではない。  夕方六時を知らせる鐘が鳴り響き空が闇に覆われる(とき)、この街にはもののけが現れるという。そのもののけは裂けた口で恐ろしいうなり声をあげながら人々に襲いかかるのだそうだ。多くの女子供が叫び、逃げまどい、辺りが地獄絵図と化すのは想像に難くない。僕は忍者として世のため人のため、もののけを成敗せねばならない。時計台の針は五時五十七分を指している。決戦は、もうすぐだ。  
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