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「このバカタレ!」
西村さんが扉を開けて僕が中に入ると、クノイチ姿のお母さんが怒鳴る声が部屋に響き渡った。
「お母さん、落ち着いてください」
西村さんはそう止めようとするけど、お母さんの顔色はまだ真っ赤だ。
「落ち着いてられるわけないでしょ!」
お母さんの一声で、西村さんは縮み上がってしまった。
「直斗がいきなりいなくなって、どれだけ捜したと思ってるの!」
お母さんはさらに僕を怒鳴りつけた。
「まぁまぁいいじゃないか。とりあえず迷子センターの人に見つけてもらえたんだから」
今度は僕と同じ忍者姿のお父さんがそうなだめるけど、
「甘いわよ!」
お母さんはあっという間にお父さんを斬り捨てた。もののけなんかよりお母さんの方がよっぽど、怖い。
「遊園地の職員さんに探し回らせた上に役者さんに斬りかかるなんて、アンタホントに何考えてんの!?」
お母さんはさらに僕を怒鳴りつけた。
「まぁゾンビ役の役者も悪ノリが過ぎたと反省しております。直斗君のおもちゃの刀に電動ノコギリのレプリカで応戦するのはさすがにやりすぎですから。ですからこの辺で……」
「本当に申し訳ありません」
お母さんは西村さんに深く頭を下げた。
「顔をあげてください」
「ほら、アンタ達も謝る!」
西村さんの言葉など意に介さず、お母さんは僕たちにピシャリと言いつけた。
「……ごめんなさい」
僕とお父さんは揃って西村さんに頭を下げる。西村さんは首を横に振った。
「双方怪我もなかったですし、無事直斗くんはこうして戻ってきたんですから。これで良しとしましょうよ」
西村さんの度重なる説得に応じ、ようやくお母さんは顔を上げた。
「さぁ、まだハロウィンナイトは終わってませんよ。残り時間、楽しんできてくださいね!」
西村さんはそう言うと、僕たちを迷子センターから送り出した。
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