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『いつか僕も飛べるかな』
河川敷に並んで座ったいつかの日の夕暮れ。
気弱な僕の言葉を蹴り飛ばすように朝日は訊き返す。
『いつかって、いつ?』
いつだろう。とりあえず天気の話をするのと同じ、間を持たせるための形だけの会話で、未来の話をしてるわけじゃない。
僕がつるりとした背中を丸めていると、朝日はじれったそうに立ち上がり、僕の目の前に堂々と立ちはだかった。
『夕ちゃん。飛ぼうよ、一緒に』
真っ赤に燃えた空を背に立つ彼女のシルエットが今でも眼裏に焼き付いている。
ボーイッシュな短髪、すらりとした手足。
竜を思わせる一対の羽――。
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