25人が本棚に入れています
本棚に追加
幼馴染み以上恋人未満以下省略
賢次が、絶賛超絶不機嫌なのだ。事の発端は、俺が女子から預かった手紙。「この前、ちゃんと出来たんだから返事をしろよ」と渡した。
それを受け取らない賢次に、無理矢理押し付けたせいなんだけど……
「なんで? 健は嫌じゃないの?」
「……ん? 別に」
「俺が他の人…俺を好きな人と話するんだよ」
「……だから?」
なんで、あんなに不機嫌になるんだ? 賢次がモテるのはずっと前からだし、腹立つけどイケメンなんだからそれは仕方がない。
「あっ、シゲ、それ新作のポテチ? 頂戴!」
「うん? ほれ」シゲは、指でポテチを摘み俺の口元へ近付けた。
「あ~んんんっ!」
「ダメ!」
シゲの手を阻み、賢次が俺の顎を掴んだせいでポテチを食べ損ねた。
「なにしゅんらよ!」
「食べたいなら帰り買ったあげるから! ね?」賢次は、メラメラと燃えるやような強い眼差しで俺を覗き込んでくる。
「……おお、絶対な」俺は、その圧に押され頷いてしまった。
「おまえ等…喧嘩するのかイチャつきたいのかどちらかにしろよ」シゲは、手に持っていたポテチをいい音を立てた咀嚼した。
「え? 喧嘩? してないよ。賢次が不機嫌なだけだ」俺は、いつまでも膨れっ面な賢次を押し退けた。
「……無自覚か」シゲは、ポテチもぐもぐしながら苦笑した。
「え? なにが?」俺の頭上に、いくつもクエッションマークが浮かぶ。
「あっ次、移動教室。行くべ、かっちゃん」
「ほら、痴話喧嘩程々にしておまえ等も行くぞっ」かっちゃんは、袋ごと口へ近づけ最後のポテチを食べ切った。
「痴話喧嘩?って何?」
「さすが健だな。賢次も苦労するよな」シゲは、ニヤニヤ笑いかっちゃんと教室を出て行った。
「シゲ、かっちゃん。俺も行くって」俺は、慌てて教科書を取り出した。その手を賢次が掴む。
「たけちゃんは俺と行くの」賢次は、俺を覗き込んで圧を掛けてくる。
「ああ? ほら、早く行くぞ」
誰もいない教室。賢次は、開いてる扉から出て行こうとした俺の腕を掴み引っ張った。後ろから抱き締め、俺の唇に軽く触れるキスをした。顎の手が上へ押し上げる。口元が緩み、賢次が中へ入ってくる。
「や…だ…って賢次」俺は、顔を逸らし賢次を押し退けた。
「足りない…健が……」賢次は、逃げ腰になる俺を抱き寄せる。顔を背けても執拗に追ってくる賢次の唇。俺は、耐えきれず自分の口を両手で塞いだ。
「賢次! 学校で…こうゆーの嫌だって!」
くっそっ慣れねぇ……なんで、平気なんだよ!
こいつは!
「健が悪いんだからな」
「は?」
俺は、火照った顔を両手で叩いた。その手を賢次が握って俺の掌にキスをする。
「……もう…健、可愛い」賢次は、俺を抱きしめて俺の左内腿に手を滑らせる。
「ちょっ! どこ触ってんだ!」
「ちょっとだけ……ね……」賢次は、下唇をぺろっと舐め更に上へ手を滑らせた。
「ああああ~~!!」
俺達は、取り敢えず授業にギリギリ間に合った。賢次はというと、相変わらず不機嫌なまま。
「それ、どうしたんだよ」
かっちゃんは、賢次の頬が腫れてるのを見て顔を顰めた。
「なんでもない……」賢次は、不機嫌な顔を逸らした。
「賢次が悪いんだ! 学校であんなこ…とんん!」
「ああっ! ああっ! ちょっと! たけちゃんって!」賢次は、慌てて俺の口を塞いだ。
「賢次…苦労するね」シゲは、深くため息を吐いた。
「お互い様って感じやけど」かっちゃんは、慌てる賢次と俺を横目にニヤニヤ笑った。
「だな……」シゲは、深く頷いた。
少しズレてる幼馴染み二人を、暖かく面白く見守る茂樹と勝己だった。
最初のコメントを投稿しよう!