ラミネート

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ラミネート

 大陸歴・一三五〇年、青竜の月――――  俺の乗る船がミュラレスナ大陸沖を航行中に起きた出来事はまさに悪夢だった。 「…………だぁ!エン……ド……だぞ……」  誰かが何かを叫んでいる。その、声が途切れ途切れに聞こえてきて俺の目を覚ました。だが、俺はそれを気にせず船室のベットに再び潜り込み眠りにつこうとする。  船上で怒号が飛び交うなど別に珍しくはない。  この船は王国の軍艦だった。  乗っている船員も鍛え上げられた海軍の者達なので、何かあっても何とかするだろう……くらいの気持ちで瞳を閉じた。  しかし――――上での騒ぎはなかなか収まらないようだ。  やけに長いことやってるなぁ……  途端に轟音が鳴り響き船が大きく揺れ、俺はビックリして飛び起きた。  一応簡単に装備を整えると自分の船室を出て、フラフラと様子を伺うように艦内を歩いていたのだが。 「邪魔だガキ!そんな所でボケっとするな!」  そんな怒号が聞こえると同時に王国海軍の兵士に突然後ろからぶつかられたのだ。  まだ10歳の俺の小さな体は前のめりに飛ばされ床に突っ伏した。 「いってぇ……」  頭にきて、俺を睨み付ける兵士を睨み返した。 「なんだその目は!おまえは海上じゃ役に立たねぇんだ。すっこんでろ!」  その言葉に俺は悔しさで唇を噛み締める。  クソッ!俺だって好きでこんな船に乗ってるわけじゃないんだ。    だがそのムカつく兵士は次の瞬間。俺の目の前で首から大量の鮮血を吹き出してそのまま倒れた。  倒れた兵士の代わりに、奇妙な猫の仮面を被った男が立っていて俺は唖然とした。  その猫男の手に握られている短剣が兵士の首を切ったのだと瞬時に理解出来た俺は、直ぐに男から距離をとり腰の剣を抜いて構えていた。  何故なら順当に考えて次は俺だと思ったからだ。しかし、男の口からはその考えを覆す言葉が発せられた。 「なんだ……ガキか。早く消えろ」  意外と若い感じの声で俺に吐き捨てた仮面男は、俺を無視するように直ぐにその場を立ち去った。   クッ……子供だからってなめるな!  俺は直ぐに後を追った。が、見当たらない。男を探して甲板への階段を駆け上がった俺は、辺りを見て自分の目を疑った。  十隻いた筈の王国の艦隊は、この船を残して全て炎上していた。更に甲板のあちらこちらに王国の海軍兵達の死体が転がっているのだ。  ――――何だこれ?  俺は、夢でも見ているのかと思った。  が、これは本当に夢だったのだ。まさに悪夢。  現在二十一歳の俺は柔らかなベットの上で瞼を開いた所で、身体中が大量の寝汗で濡れて気持ち悪いと感じている最中だ。 「はぁ……また子供の頃の夢か……」  目覚めの悪さに額を押さえていると部屋のドアの方から床を擦るような音が聞こえた。目線だけをそちらに向けると、ドアの下の隙間から何かが差し込まれて来る。
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