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【ラミネート】それは人の名前ではない。
国……と言う程でもない。土地の名前だとでも言っておこうか。
とにかく、そのラミネートに一軒だけある屋敷は全体が黒で統一されている為、別の名を【黒の城】などと呼ばれている。
そこに住むのは〈アルノール公爵〉だ。
公爵と聞けば立派な人間に聞こえるが、僅かな領土と兵隊を持つ『単なる変人』って噂が殆んどだ。
ラミネートはアルミル王国領土内北側の山中に有るが、その一角だけはアルミルの領土ではない。
そんなどこの国にも属しないラミネートは、一際切り立った岩山に包まれる様に囲まれている場所にある。
その為、その岩山を越えるか1つだけ通っている洞窟を抜けるかしないと辿り着けない場所なのだ。
その岩山を登る大変さと言ったら。登るだけで余裕で2日はかかるし、登ったとしてもラミネート側へ下る時に館から丸見えだ。
当然、石が飛んでくるか。矢が飛んでくるか。魔法が飛んでくるか。
結論だけ言えば、館に近付く前にめでたくあの世行きだ。
ならば洞窟を抜けるルートか。
だがこちらは魔物だらけな上に狭い。しかもラミネートは領土内の魔物すらも従えているという噂は有名だ。
そんな魔物の兵隊に待ち伏せでもされたら確実に葬りさられるという素敵な洞窟だ。
「この仕事やりたいんだけど?」
誰もが無謀だと思った依頼書を指差し、俺がそう言った時のギルドの受付嬢の驚き様ったら今でも脳裏に浮かぶ。
だが、それから僅か3日後には同じ受付嬢に「依頼を達成した」と報告に行った。
受付嬢が、まるでキツネに摘ままれた様な顔をしていて笑ってしまった。
実際には『キツネみたいな顔』の受付嬢だったが……
で、話を戻すが。俺が助けたそのお姫様が俺に手紙を送ってきたというわけだ。
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