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アルノールとラクとパステル
翌朝。俺が屋敷の門から外に出ると正面にある洞窟の方から、銀色の髪を風に靡かせたパステルが洞窟の門番である男2人と数体のゴブリン兵に囲まれて歩いて来るのが見えた。
おうおう。美人が胸元ちらつかせて俺を口説きに来たか。
「随分と早いお越しで……お姫様」
「愛する方に会いに来るのは自然ではありませんか?公爵様……いや違いますね。ラク様とお呼びしましょうか?」
なんだ?本当に口説きに来たぞ……
驚いた事に。このパステルは俺が迎えを出す(拉致する)前に既にラミネートに向かって護衛も付けず、たった1人で歩いて来ていたようだ。
手紙や荷物を配達する職にいる者でもラミネートへの配達は嫌がると聞いた事がある。
彼女の場合、よりにもよって前に拐われて連れて来られているのに再びノコノコやって来たのだ。その度胸には俺も若干引いていた。
コイツ、お姫様とは名ばかりのジャジャ馬じゃないか?
「さて。ちょうどお姫様には、聞きたい事があるんだ」
「私も同じくですわ!」
ふっ。コイツは相当気が強そうだ。
俺にこんなに真っすぐな瞳を向けてくる女は見た事がない。
彼女を連れてきた2人の門番も驚いた表情を隠せないでいる。
俺の口から思わずため息が漏れたのも仕方のない事だろう。
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