5人が本棚に入れています
本棚に追加
目覚ましが鳴っていた。あたしは眠い目をこすりながら起き上がる。
なんだか、懐かしい夢を見ていたような気がする。「ユウト」の夢……
彼があたしの前から姿を消して、いったい何年が経っただろうか。
『あおい、いつまでもぼーっとしてるの?』
そうそう。「ユウト」はこういう優しい感じの物言いをする子だった。
『ねえ、ちょっと、時計見てよ。この時間、大丈夫なの?』
……!?
思わずあたしは振り返る。そこには……
あたしと同じくらいの年頃の男子が、浮かんでいた。
「うわああああ!」
あたしは悲鳴を上げて後じさる。
『相変わらず、怖がりだね』
目の前の男の子が、呆れ顔で言う。黒い学生服を身にまとい、髪はツーブロック。ちょっとナヨっとした、線の細そうな顔立ち。全然見覚えがない。というより……
その体の向こうの様子が……うっすら透けて見えるんだが……
これは……幽霊とか、そういう類いの物なのか……?
「あんた……誰……?」あたしの声が恐怖で掠れる。
『忘れちゃったの?』
彼の呆れ顔にさらに拍車がかかる。
『ユウト、だよ。小さい頃によく遊んだじゃない』
最初のコメントを投稿しよう!