閉ざされた過去は 決して消える事はない

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閉ざされた過去は 決して消える事はない

私の名前は夏並 千代華(なつなみ ちよか)。これでも私は、国立大学に通う三年生。今は経済学部で、世界の経済事情を勉強している。卒業後は、父が社長を務めている会社に就職する予定。 父の会社はそれほど大きくはないけど、徐々に大きく成長している。主に「革製品」を扱う、地元でかなり有名な会社になった。だから私は今、父の会社が世界でも通じるように、経済事情の他にも、外国の流行なども頻繁にチェックしている。いつか父の跡を継いで、次期社長になっても恥ずかしくないように、今は日々勉強の毎日を過ごしている。 私は今、実家を離れて大学近くのアパートで一人暮らしをしている。いつもアパートに着くのは夕方頃だけど、今日だけは遅くなってしまった。大学の文化祭が近いから、その準備で遅くなってしまった。 大学の文化祭には、出店や展覧会の催し物が行われる。私は付き合っている彼氏が携わっている、ファッションショーでモデル役を務める事になった。衣装などは別に文句はないけど、歩き方なんてあまり意識した事のない私にとって、大学の行き来ですら最近しんどい。 彼氏に何度も特訓に付き合ってもらって嬉しい事は確かだけど、何故か最近、歩く事に過度なプレッシャーを感じるようになった。だから今日も私の足は電柱の様に、強固に固まってしまう。良い歩き方をすれば、痩せたり健康的にも良い事は知っていたけど、文化祭が近くなれば足にかかるプレッシャーも日に日に重くなる。 でも彼氏や友達の為にも頑張らなくてはいけない。それに文化祭には私の両親も彼の両親も、わざわざ地方から来てくれる。だからこそ、私の心は不安と同時に期待も高まっていた。 とりあえず今日はゆっくりお風呂に入って、足のマッサージをした後にすぐ眠ってしまおうと考えていた。夕食はさっき彼氏と一緒にファミセスで済ませてきたし、あとは身支度をして寝るだけ。 アパートが見えてくると、私はすぐに靴を脱いで裸足になりたくて、自然と早足になる。でも一人暮らしとなれば、色々とやらなくちゃいけない事がある。それは、郵便物のチェック。時々両親や地元の友人からの手紙が入っていたりするから、ポストはこまめにチェックしている。実家から出る前に、両親からそう教わっているから。 でも案の定、入っているのはくだらないチラシのみ。私はそのチラシを自分の部屋にあるゴミ箱に捨てようと、ポストの中に入っている物を手探りで全て取り出す。しかし、玄関のライトに照らされた自分の手は、チラシ以外の物も掴んでいた。
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