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「鉄羅くん、今日はお弁当なんだ。」
学食には行かず、誰もいない講義室で弁当を開いていると声をかけられた。
声の主は、星叶(ほのか)ちゃんだ。彼女は高校のクラスメイトで大学でも同じ学部に進学した俺の数少ない女友達だ。
「目玉焼き美味しそう。お弁当には卵焼きじゃなく目玉焼きもいいね!」
「うん。卵焼きは調味料を入れるけど、目玉焼きはそのままでいいからヘルシーなんだ。」
「鉄羅くん、体重なんか気にする必要あるの?」
「いや、一般論だよ。」
「あはは。ねえ、今日5限までだよね。終わった後一緒に帰らない?私今日車で来たの。」
「ああ、いいよ。」
工学部は女性が少ないせいもあり可愛らしい星叶ちゃんはとても人気があった。彼氏はいないようなので一緒に帰るくらいはいいだろう。
放課後駐車場で彼女を待つと、明らかに国産車ではない独特な色と形の車が俺の前に止まった。
「お待たせ。助手席乗って。」
「ありがとう。素敵な車だね。右ハンドルだけど外車なのかな?」
「うん。フランスのメーカーなんだけど、最近日本販売を始めたの。デザインもいいけど何より色が気に入って。日本人が思う水色って感じじゃない?」
「そうだね。車だとメタリックブルー、いわば光沢のある青色が主流だもんね。車に使う水色はよくアクアブルーって言葉が使われるけど、この車の水色はアクアブルーでもないな。なんていうか日本の夏の浴衣みたいな清涼感があるよね。」
「さすが鉄羅くん。これを言ってもわかってくれる人がいなかったのよ。」
多くの男性に同じ事を聞いているのだろうか。とふと思ったけど、嫌な気分にはならず俺は素直に彼女の言葉を喜んだ。
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