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バタンッと勢いよくドアが閉まる音が玄関の方からして我に返った。
後ろを向くと閉めたはずの俺の部屋の扉は開いている。慌てて中を覗くとさっきまで寝ていたルナがいない。
嘘だろ?と思い玄関に行くと鍵が開いている。そしてルナ用に置かれていた小さな靴がない。
俺は玄関に置いてあった上着を羽織り急いで外に出た。周りを見回したが彼女は見当たらない。
近くには海がある。夜だしとにかく危ない。
強風対策のための雑木林を抜け街灯がある国道まで走った。信号付近で左右を確認したが彼女はいない。
思わず空を仰ぐと冬で空気が澄んでいるせいか、綺麗な月が見える。
ふと夕食でルナの名前に関わる月の話をしたのを思い出した。もしかしてルナは月に近づこうとしているのではないか。国道を渡り砂浜に出て月の明かりを頼りに彼女を探した。
突如、砂浜にポツンと立つ小さな人影が目に入った。微かだがその人影は動いている。
俺は目を細めてその姿をじっくり見た。
あれはルナだ。
ルナは勢いよく家を出たものの道に迷ったらしく、彼女の青い目は恐怖で涙が溢れ金髪と共に月の光に反射し砂浜より白く輝いている。
地球の生物ではないUMAかと思うくらい月の光を浴びた彼女は神々しかった。
「ルーナー!!」叫びながら俺は急いで駆け寄った。
「テーラー!!」とおぼつかない足取りで俺に駆け寄る彼女を強く抱きしめるとツムジに自然に唇が触れた。
砂と潮の香りが混じったビロードのように柔らかい髪の毛の感覚は何年たっても忘れられない。
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