第2章:Fly me to the moon

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 冬が過ぎ春の兆しが感じられるようになったある日、親父は家で古い洋楽を繰り返しかけていた。  ルナはその歌をよく知っているらしく、親父と2人で歌いご機嫌だった。  Fly me to the moon♪  Let me play among the stars♪  何度も2人で歌うのでどうしていいかわからない俺は聞き取れた歌詞を翻訳してみた。 『私を月まで連れて行って。星の海で遊ばせて。』    親父はこれはルナの歌だよと呑気に言い、俺を近くに呼びつけ紙に文字を書いた。 『月詠(ルナ)』 「月に詠(うた)うっていう意味だ。素敵だと思わないか?」  小学校に通うなら日本の漢字があった方がいいもんな。親父は意外にちゃんと考えているんだな。俺は「うん。いい名前だね。」とだけ答えた。  この曲の歌詞には月だけではなく火星や木星が出てくるのでSF色が強い歌だと思っていたが、英語の知識が増えた数年後に『月に想いを託す愛の歌』だと知った。  俺的には大きな発見だったが親父や月詠にはなんだか恥ずかしくて言えなかった。俺より英語ができる彼らならとっくに気づいているだろう。
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