第2章:Fly me to the moon

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第2章:Fly me to the moon

「テラにい、一緒に寝よう。」  うちに来てからルナは毎晩俺の部屋を訪れる。親父曰くアメリカでは一人で寝ていたそうだが、慣れない環境で色々不安なんだろう。俺を頼ってくれるのは素直に嬉しかった。  親父はアメリカでルナと一緒に暮らしていたようだ。直接聞いたわけではないが、彼女は日本語で日常会話ができるし、教えていないのにひらがなとカタカナが読めるのでそうであろうと思う。    日本語を話す彼女を見ると母親はとても悲しそうな顔をする。母親は思慮深い人なのでルナには直接態度には出さないが、俺は母親がルナの相手をしなくていいように積極的に彼女の面倒を見るようにした。  ルナは昼間は俺が昔読んだ本を漁っており「寝る前にこの本読んで。」といつも頼んでくる。  そして俺が本を読んでいる途中でルナは眠ってしまう。青い目を閉じ血管が透き通るような薄いまぶたを見つめ彼女の寝息を聞いていると俺もいつの間にか眠りの世界に引き込まれる。それはまるで引力のような見えない強い力に引っ張られるかのようだった。  ルナが来てから2ヶ月が過ぎた。  彼女は6歳で春から俺と同じ小学校に通う。    母親は散々悩んだ結果、親父の不貞がどうしても許せないと先月家を出て行ってしまった。  その心情は俺にもよくわかったし、これ以上一緒に生活するのは母親とルナ双方にとって危険な気がした。  母親は俺に一緒に来ないかと誘ってくれた。母親と一緒に行きたいと思ったが、砂浜で月の光を浴び輝くルナを抱きしめた瞬間から、俺は彼女を守らなくちゃいけないと使命感を背負っていた。  ルナだって母親がいない。彼女が落ち着くまで俺がしっかりしないと。 「しばらくはここにいるよ。」  俺は涙ぐむ母親に申し訳ないと思いながらそう言うしかなかった。  
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