天女の末裔

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「ねぇ、彼は恋人?」 「へ⁉・・・こい、びと?」 予想だにしていなかったことを聞かれて。稜太は目をぱちくりさせながら少年を見上げた。 「あれ⁉違うの?」 「お兄ちゃんだよ」 「そっかぁ。でもね、彼はそう思っていないかも知れないよ。君には天女の血が流れている。だから年に一度だけーー子孫を残すため、満月の夜に、体が女の子に変化し、妊娠が可能になる。彼はそれを知ってて、ここに連れてきたんじゃない?」 あなたは天女の末裔なのよ。嘘か真か、幼心に深く刻み込まれた今は亡き母の最後の言葉。去年初めて体が女性化した時、訳がわからず錯乱状態に陥った稜太を兄は何も言わず一晩中抱き締めてくれた。お兄ちゃんはすべてを知っていた。そうか、だからさほど驚かずいつもと何ら変わらなかったのか。ようやく理解する事が出来た。 「かぐや姫は月に帰れたけれど、天女は子供の為に下界に留まるしかなかった」 ヒヤリとした冷たい手に胸元を撫でられた。 「まっ平らなはずなのにね、少し、ふくらんでる」 からかうように言われ、恥ずかしさと屈辱感に全身が震える。 「ち・・・が・・・う・・・・」 どうしても認めたくなくて。稜太は少年の手を制止しながら首を振った。しかし、ふっくらと膨らんだ胸を隠し通すことなど無理な話しで。ぷつりと勃ち上がっている乳首を摘ままれ、捏ねられてつねられると、今まで感じたことのない甘い痺れが背筋を駆け上がった。ガクガクと足が震え立っていられなくなった稜太の耳に自分の名前を呼ぶ兄の声が聞こえてきた。 「りょうた・・・」 耳元で囁かれて。チュッと上唇を吸われ、首筋に軽く歯を立てられた。 「さぁ、行くんだ」 「嫌だ!!」 「君と彼は前世で契りを交わした者同士。結ばれるのは・・・」 稜太は爪先を立てて懸命に背筋を伸ばし、少年の唇に自分の唇を押し付けた。 「君が好き。それだけじゃダメ?」「りょうた・・・」 驚きのあまり声が震え、やがてにっこりと目を細めて微笑む少年。 「ダメじゃないよ。じゃあ行こうか」 「うん」 稜太は嬉々として自分から少年の体に抱き付いた。朝靄が湖面から消える頃。稜太の姿もまた忽然と消えていた。
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