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夕立の幽霊
端的に言えば、俺は死んだ。
バケツをひっくり返したような、土砂降りの夕立ちが降る日のことだった。よくある交通事故だ。そんな誰の記憶にも残らないような在り来たりな死を迎えた俺だった。
しかし、体は死を迎えたものの、意識は未だ現世に留まっていた。所謂、幽霊という奴だ。服装も学生服のままだったせいか、俺が真っ先に向かったのは通っていた高校だった。
あれから、三日ほど経過しているらしい。
予定が記載された黒板の日付を見て、それを知った。おそらく、俺が死んだことも散々話題にはされただろう。
机の上には、一輪の花が咲く花瓶が置かれていた。漫画でしか見た事の無かった光景に、思わず感激してしまう。
その花を時折見つめるクラスメイトたちは、みんな口を揃えて言う。
――アイツ、本当に死んじまったんだな。
クラスメイトの死に現実味がなくてどこか楽しんでいるような、それでいて哀感を帯びた声で彼らは呟く。
その死んだ本人が、すぐ傍にいることなど誰も気が付いていないだろう。
……いや、『誰も』ではないか。
俺の一番の親友だった神崎優華だけが、曇りのないその目で俺を見つめていた。
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