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「カレーって美味しいんですか? 」 図書館からの帰り道。商店街の中央に位置している小さなスーパーで、柚月は天使と再会した。あまりにも早い再会に、彼女が言葉を失ったことは言うまでもない。 「どうして? 」 「今まで食べる機会がなかったんです。仲間から美味しいよって聞かされる度にいいなぁって思ってたんですよね」 「いや。カレーの話じゃなくて」 カレーのルーを手にした彼が、じゃあなんの話だという表情を浮かべている。こんな寂れているスーパーに立っていても天使は天使だ。 「どうしてここにいるの? 」 自分の発言がいかに可笑しいものだったかを、声に出してから気づくこともある。たまたま家が近所でいつもこのスーパーを利用しているだけかもしれない。どうしてかと尋ねられても困ってしまうに決まっている。少し考えれば分かる。迂闊だった。 「どうしてって……」 「そうだよね。こんなこと聞かれても困るよね。ごめんなさい」 「謝るなら僕を図書館に置き去りにしたことを謝ってほしいな」 柚月の手に握られたカゴをするりと掠め取った彼が、その中にカレーのルーを置くとふわりと微笑んだ。 「お詫びに今日の夕飯はカレーを作ってね。柚月ちゃん」 「え、どうして私の名前……」 「それはカレーを作ってくれたら話すよ」 右手にカゴを持ち、左手で柚月の掌を包み込んだ彼を見上げながら、自分はおとぎ話の世界にでも迷い込んでしまったのだろうか。そんなことを考えていた。
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