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——妖精の役割は癒すこと。癒しを必要としていない人間の前には現れない。 こんなに清々しく目覚めたのは一体いつぶりだろう。カーテンを開けて、ついでに窓を開ける。思い切り外の空気を吸い込むと、寝ぼけていた思考が覚醒していく。 今日は新商品の入荷がある。売り場の変更をしつつ接客。間違っても店長の売上げを越えてはいけない。嫌味を言われても笑顔スキルを発動して乗り切る。店長に入金を押し付けられた時も同様の対応で。バスに乗り遅れた時はまた歩けばいい。月の形が変化するのを眺めるのはなかなか楽しい時間なのだから。 窓に背を向けてベッドに視線を向ける。一緒に眠ったはずの朔の姿はそこには無い。微かにシーツに残っていた温もりが、夢ではなかったことを伝えている。胸いっぱいに息を吸い込んでから勢いよく吐き出す。 「よしっ。準備しますか」
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