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ある日、画家の元に一人の男が現れました。それはこの国の王様の側近でありました。
「画家よ、マヌケな化け物がほしいのだが」
「マヌケな、ですか」
不思議な頼み事に首をかしげる画家に、側近はこう説明しました。
「次期王様となる王子は、大変弱虫で臆病者である。自信をつけさせるためにも、そんな王子でも退治できる化け物がほしい」
そんな内容でした。
画家は戸惑いました。
今まで、退治させられるために描いた絵など、なかったからです。
しかし、大量の金貨を押しつけた側近は「ではよろしく。また明日、化け物を引き取りにくる」と言い残し、帰ってしまいました。
画家は仕方なしに、重たい腰を上げました。これも仕事。大変真面目な画家は、キャンバスに向かい、マヌケな化け物を描き始めました。
しかしマヌケな化け物とはどんなものなのか、頭を悩ませてしまいます。
強くしてはいけないので、犬くらいの小さなものにしました。
爪は鋭くなく、牙も丸みを帯びたものにしました。
目は寄り目がちにして、ふむ、これはマヌケだなと、画家も納得してしまう出来上がりになりました。
あとは自分のサインをキャンバスの片隅に入れれば、この絵に魂は宿ります。
しかし側近が来るのは明日なので、それをせずに画家は寝ることにしました。
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