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39話
最後の出勤日。
日本を発つ日が、明後日の午後に迫った。
「椎名さん、いよいよですね〜。」
出勤すると、フロアの入り口で佐藤くんと会った。
「あ、おはよー。いよいよだね〜…。そうだ、メールの添削ありがとね!助かったよー!」
「ほぼしてないですよ!完璧でしたよ?」
「いやいや、もう不安しかない!」
「黒崎さんは、先に行ってるんですよね?」
「うん。だから、向こう着いたら空港まで迎えに来てくれるって。黒崎さん居るから、なんとか踏ん張ってくるよ!」
「牧さん、どうするんですか?」
心臓が口から出そうなほど、びっくりした。
「どうするって?!何?」
「いやぁ、二人の行く末が気になっちゃうんですよ!絶対、牧さんは椎名さんが好きだと思うんです!」
佐藤くんが鋭いのか、私が鈍かったのか…。
レンタルショップで会った事も黙ってくれているし。
口は硬そうだけど…
私が話すより、冬馬から話してもらおう…。
「何で、そう思うの?」
「椎名さん、あんなに一緒に居て、一回も思った事ないですか?牧さんが自分の事好きかもって…。」
冬馬が好きだと気付く前も、気付いた後も、私を好きかもなんて思った事なかった。
「椎名さんって、なんていうか…もっと自分の事知った方がいいと思いますよ?後輩の僕が言うのもアレですけど…。」
「例えば?」
佐藤君は、周りをグルっと見渡して声を小さくして言った。
「椎名さん、モテてますからね?このフロアだけでも結構いますよ?もう、ここに居ない人もいますけど…」
「はっ?」
爆弾発言に驚いて、せっかく佐藤君が小さい声で言ったのを台無しにしてしまった。
出勤してる人が何人かこっちを見た。
「僕、そう言うオーラ?見えちゃう体質というか、感が鋭すぎると言うか…。」
ギクっとしたーーー。
じゃあ、私のオーラ?も…。
いや、そもそも本当かどうか…。
「あ、椎名さんのは見えてません!残念ながら…男性しか分からなくて…。」
私のほっとした顔を見た佐藤君がニヤっとしたーーー。
「本当に分からないと思います?」
「どっち?!怖いんだけど!」
「ははっ!女性のも見えたら、僕はとっくに彼女が出来てますよ。でも…、最近の牧さん、ちょっと変わったんで、何かあったのかなーとは思ってます!」
にやっとしながら、私を見てきた。
「佐藤君…、それ、牧に聞いてみたら?」
それだけ言って逃げるように自席へ向かった。
冬馬との入籍を、隠したいわけじゃなくて、ただ、恥ずかしい…。
あんなに親友だと言い回っていたのに…。
顔向け出来ない…。
私がイギリスに行った後、冬馬が浸透させてくれたらいいなと思ってる。
冬馬なら、何でも上手く話してくれそうだし。
よろしく、冬馬!
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