お沙夜と正二郎

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いつもと違う道を進んだからか、意外にも目的の木は早く見つかった。 帽子の付いた丸い形のものを、という沙夜のこだわりで、二人して木の根元にしゃがみこんでドングリの品定めをする。 「傷がついているのはダメよ。もちろん虫食いのも。あと大き過ぎても小さ過ぎてもダメですからね。」 「はいはい。」 「『はい』は1回!皆にあげるものなんだから、ちゃんと選んで下さい!」 「皆、ですか?」 てっきり自分用か、せいぜい両親にあげるのだろうと思っていたので予想外だった。 「えぇ。私の大事な家族、皆です。清太さんの言う通り、あの店の人達は皆、私にとっては家族ですから。」 昨日の店での会話を聞かれていたらしい。きかれてまずい話をしていた訳ではないけれど。 「盗み聞きとは感心しませんね。」 正二郎が眉間にシワを寄せて言うと、沙夜は両手を腰に当て開き直った。 「まぁ人聞きの悪い。たまたま聞こえてしまったのよ。あんなところで大声で話している方が悪いんです。」 そう言い切られてしまっては言い返す事が出来ない。 正二郎はやれやれと溜息を吐きドングリ拾いを再開した。
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