3人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもと違う道を進んだからか、意外にも目的の木は早く見つかった。
帽子の付いた丸い形のものを、という沙夜のこだわりで、二人して木の根元にしゃがみこんでドングリの品定めをする。
「傷がついているのはダメよ。もちろん虫食いのも。あと大き過ぎても小さ過ぎてもダメですからね。」
「はいはい。」
「『はい』は1回!皆にあげるものなんだから、ちゃんと選んで下さい!」
「皆、ですか?」
てっきり自分用か、せいぜい両親にあげるのだろうと思っていたので予想外だった。
「えぇ。私の大事な家族、皆です。清太さんの言う通り、あの店の人達は皆、私にとっては家族ですから。」
昨日の店での会話を聞かれていたらしい。きかれてまずい話をしていた訳ではないけれど。
「盗み聞きとは感心しませんね。」
正二郎が眉間にシワを寄せて言うと、沙夜は両手を腰に当て開き直った。
「まぁ人聞きの悪い。たまたま聞こえてしまったのよ。あんなところで大声で話している方が悪いんです。」
そう言い切られてしまっては言い返す事が出来ない。
正二郎はやれやれと溜息を吐きドングリ拾いを再開した。
最初のコメントを投稿しよう!