お沙夜と正二郎

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数日後、沙夜は無事に御守りを作り終え、「家族」全員に配り回っていた。 渡された者は皆一様に喜び笑顔で礼を言い、中には僅かに涙ぐんでいる者もいた。先日の清太同様、娘を嫁に出す父か兄の心境なのだろう。 「はい、清太さん。」 「俺にもくれるんですかい?ありがとうございます。お嬢様だと思って肌身離さず大事にします!」 「やだ、大袈裟ね。それに、これは枕元に置くものですよ?」 彼らの親心に気付かない振りをしながら沙夜は殊更に明るく振舞っていた。 「正二郎!はいこれ、貴方にも……と言いたいところだけれど。」 小さな掌にちょこんと藍色の小袋を載せて正二郎に差し出した沙夜だったが、正二郎が受け取る前に小袋を握りしめ、両腕を背後にまわした。 「何ですか?」 「この間の……『たまたま聞こえてしまった』話のことだけど。」 沙夜と清太に正二郎が無理矢理ドングリ拾いに行く約束をさせられた後のことだろう。 「あぁ……あの時の、どの話ですか?」 「貴方、私のこと妹のようには思っていないと言いましたよね?」 マズイ事を聞かれた、と思うよりも、そんな所まで聞いていたのかと呆れてしまった。それと同時に、そこは聞かなかった事にするのが女子ではないのか、と更に呆れた。
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