お沙夜と正二郎

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「直球ですね。というか、そこ聞きます?せめてもう少し遠まわしに言うとか……。」 「『家族』相手に遠慮してどうするのです。それよりどうなの?私の事妹とは認めて貰えないの?私が妹では不満なのですか?」 ずいっと顔を近づけて詰め寄る沙夜に気圧され言葉が出ない。 「黙っていては分かりませんわ。さぁ男らしくキッパリと答えなさい、正二郎!」 沙夜は両手を腰に当て仁王立ちをする。こうなっては納得するまで梃子でも動かないだろう。 「……そういう所が、妹に思えないと言うんですよ。そうですね……どちらかと言えば『姉』でしょうか。僕の事、兄と思って下さるのなら、妹らしい態度をとったらどうです?」 正二郎の答えが意外だったのか、沙夜は目をパチパチさせ両手を下に力なく落とした。 意味がわからない、といった様子の沙夜に、諭すように、無意識に普段よりも優しい声色で付け足す。 「もう少し、素直になれば良いのですよ。」 「わ、私はいつも素直です!」 「お嬢様は『素直』ではなく『遠慮がない』だけです。素直に……いえ、もっと甘えれば良いのですよ。」 正二郎はほんの少しだけ自分より低い沙夜の頭に手を乗せて、ポンポンと撫でるように叩いた。失礼な事だとは分かっていたが、そうせずにはいられなかった。
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