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「相変わらず、つれないなぁ正二郎は。僕の事、本当に友達と思っているのかねぇ?」
伊織は「はぁ~」と息を吐き大袈裟に首を振る。
「それはこちらの台詞だよ。君こそ、いつも食えない笑顔を浮かべて飄々とした態度で僕をからかって。僕の事を友達だと思ってるようには見えないね。」
「そうかな?僕なりの愛情表現のつもりなんだけど。友達なんだから分かってくれてると思ってたよ。」
「それも、こちらの台詞。友達なんだから分かってくれてるだろ?僕は不器用なんだよ。」
正二郎が腕を組んでニヤリと片頬を上げてみせると、伊織はパチパチと瞬きをして「ぷっ」と吹き出した。
「ははは!これは一本取られたかな。分かったよ。友情を疑って申し訳ない。」
軽く頭を下げる伊織に「分かればよろしい。」とわざとらしく胸を張って答え、二人して声を出して笑いあった。
「じゃぁこの流れで改めて聞くけど、お沙夜は?友達だと思ってる?」
口元はまだ笑っていたが、伊織の目は真剣そのものだった。
「は?そんなの、見れば分かるだろ?お嬢様は僕らと違って素直だから、すぐ態度に出るし。というか、それは僕に聞かずに本人に聞いたら良いじゃないか。」
「あ~、違う違う。『お沙夜が僕を』じゃなくて、『正二郎がお沙夜を』だよ。さっきみたいに奉公人だなんだってのは今回はナシ!そんな上辺の答えはいらないよ。」
伊織は笑みを引っ込めて問い詰めた。今日こそは逃がさない。そんな気合いが見えたのか、観念した正二郎は眉間にシワを寄せて伊織から視線をそらして答えた。
「上辺じゃなくて本心なんだけどな……。でも、その、最近、ちょっと家族って言うか、妹みたいだな……とか。思ったりする事もあったりなかったり……?」
「……いもうとぉ~?まぁ『お嬢様』よりは進展してるのかもしれないけど、何がどうしてそんな事に?しかも疑問形。」
伊織の眉間に正二郎より深いシワが出来た。全然納得していない顔だ。
「何でって、それはお嬢様が僕を『お兄さん』とか言い出して……って元はと言えば君が原因じゃないか!」
ビシッと指さして口を尖らせる正二郎だったが、伊織は当然訳が分からず首をかしげた。
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