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「じゃぁ何ですか?」
「だから、来るのが早い、と言っているんです。」
何がどうして「だから」に繋がるのか分からなかった。女の子の話はすぐに何処かへ飛ぶしコロコロと変わっていく。全くついていけない。
「私の行く先に見当がつくというのなら、逆に行かなそうな所も分かるということでしょう?だったら、わざと先にそういう所をグルッと一回りして、一番最後に私のいそうな所に来ればいいんです。そういう気遣いはないのかしら?と言っているんですよ。」
「気遣いって……お嬢様は遊び回ってるだけじゃないですか。僕は忙しいんですよ!仕事抜けて探しに来てるんですっ!」
キツめの声で言ってはみるが、効果は期待していない。
案の定沙夜は正二郎の抗議など何処吹く風で軽やかに木の根を跨いで行く。
「正二郎は仕事し過ぎではないですか?子供なんだから遊べは良いのよ。というか、遊びましょ?ね?」
「自分ちの奉公人に言うことですか。それに、僕はもう子供ではありません。お嬢様も、縁談だって来ているんでしょう?いつまでも子供のつもりでいてもらっては困ります。」
正二郎は何気なく言ったつもりだったが、それを聞いた沙夜は立ち止まり俯いてしまった。
出過ぎたことを言ったかもしれない。正二郎はかける言葉を見失った。
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