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ファンレター
今はネット上での小説サイトがたくさんあって、そこでダイレクトに反応があることが多いし、それはそれでありがたいことではあるのだが、紙媒体で出したものに対して、たまーにではるが手紙が届くことがある。いわゆるファンレターというものだ。
わたしのようなマイナーな作家みたいなものでも、酔狂でコアなファンという奇特な御方がいらっしゃって、それこそ思いの丈を詰め込んだ手紙をくださることがある。
「あなたのいちばんのファンより」
これはありがたいと同時に恐怖でもあり、時にはわずらわしくもあるのだ。
売れる作品を書くには、ある程度のファン層に受け入れられるものを作る必要があるのだが、それが自分の書きたいものに反しているとかそぐわない場合には悩んでしまう。また、ファン層に媚びたものばかりでは自分が嫌になってしまうし、逆にそういう媚びは敏感に伝わるものだし、飽きられてしまう危険性も多くある。
自分が書きたいものを書こうとすると、“コアなファン”が許してくれないケースが発生する。
「こんなんじゃなかった!」
「私が読みたいのはこれじゃない!」
「あなたは変わってしまった」
などなど、まるで別れる時の恋人同士のような感情が芽生えるのである。もともと付き合ってないのだから、相手が離れていくならそれは勝手にどうぞという気持ちなのだが、中には過激な人もいて、脅して書き直しを要求されたりする。
そうなると、もう、わたしの作品のファンなのではなく、“わたしの作品が好きな私自身のファン”としか言いようがない。あなたはあなたが好きなのだからあなたの作品を書いてくださいとしか。だから、
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