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「ところで、ビスク……ドール……とは? お人形、ですか?」
「えぇ、津田先生が答えてくださったように、この家に古くから伝わる十九世紀の名品と言われるお人形です。”レディー・エメラルド”という名前は、その瞳がエメラルドを加工して作られているため、愛好家の間ではそのような名前で呼ばれておりますの」
「なるほど……で、そのお人形が居なくなってしまったんですね?」
「はい。先生にお電話いたしました日に、いつも飾ってある棚からエメちゃんが居なくなっているのに気がつきまして、その……私取り乱して先生のところの家政婦さんには、大変ご迷惑をおかけいたしました。我が子のように大切に思っていましたもので……」
「あのー、あの子とは違うのですか?」
新品ではなく長く使われてきたことで生まれる独特の艶を放った大きなマホガニーのキャビネットに、アンティークドールを見つけ聞いてみた。
「はい。あそこにエメちゃんを飾っていたのですが、気がついた時にはあの子にすり替わって居ましたの」
津田先生は立ち上がってキャビネットへ向かった。
「見せて貰ってもよろしいですか?」
「えぇ、構いませんわ」
清子さんも席を立ちアンティークドールのあるキャビネットの扉を開けてくれた。
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