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一度そう思ってしまえば、いくら気を紛らわせようとしても、頭の片隅に夜ふかしの四文字がしがみついて離れない。ぼくはゆっくりと寝返りをうち、仰向けになった。何時間も枕に押し付けていたらしい右側の頬が、少し熱く感じる。
ここから身体を起こして、それから扉を静かに開けて、リビングに行く。ぼくはその動作を二・三回、頭の中でシュミレーションした。
まだ、言いつけを守ろうとする気持ちもあるが、ぼくの体を動かすのは、夜ふかしをしてみたいという気持ちの方だった。
ぼくは、そんな二つの気持ちに整理がつかないまま、ゆっくりと上半身を起こした。布団とパジャマがこすれる音が、凄く大きく感じる。
ぼくは、パパとママの様子をちらりと伺った。どっちも、ぴくりとも動かずに眠っている。それは、まるでこのまま目覚めないのではと思うくらいで、少し怖くなった。
それでも夜ふかしの魅力には敵わなかったらしく、ぼくはさらに体を持ち上げ、二本脚で立つことができた。そのまま、腰を曲げて手を前に出した、泥棒みたいな格好で、ゆっくりと布団から足を出す。
ひんやりとした床に、足の裏についた汗が吸い付いて、足を離す度に変な音がする。少しでも音を立てると、パパやママが起きてしまうのではと思い、ぼくは慎重に歩みを進めた。
扉の目の前まで辿り着くと、ぼくは振り返って部屋を眺めてみた。それは間違いなく、いつも見ているお部屋だ。でも、その部屋が真っ暗になっただけで、どこか別のおうちみたいに感じられた。
ぼくは音を立てないよう、静かに扉を開けた。そしてそれと同時に、言いつけを破ってしまったという罪悪感が襲ってきた。けれど、ぼくにはその感覚でさえも新鮮で、どこかうきうきした気分になれたのだった。
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