秘密の夜ふかし

6/7
前へ
/7ページ
次へ
 ぼくはキッチンをあとにすると、テレビと向かい合わせに置いてあるソファーで横になった。いつもは、おかしを食べるときは、机にティッシュを敷いて、その上で食べるように言われている。だが、この期に及んでそんなルールを守る必要なんてない。  小さなチョコを次から次へと口に放り込みながら、ぼくは次にやることを考えていた。自由に何でもできるとなると、案外やりたいことというのは見つからないものだ。  それに、ほぼ真っ暗なリビングで一人ぽつんと佇んでいると、寂しいような怖いような、何だかシュールな気持ちになってくる。  ぼくは、テレビのリモコンに手を伸ばした。実を言うと、ぼくが好きな番組は『仮面ロイダー』と『世界動物ハプニング』くらいで、それ以外はほとんど見たことがないし、興味もない。でも今は、賑やかな雰囲気が恋しい。  赤い電源ボタンを押した瞬間、眩い光と騒がしい音が、テレビ画面から飛び出してきた。光は少し青白く、ぼくを含めたテレビの周りのものを照らし、音はこの部屋どころか、家全体に響いているのではと思うほど大きく感じられた。  その強烈な刺激に、ぼくの体はびくんと動いた。取り敢えずリモコンで音量を調整するが、光の強さの調整方法は分からない。仕方なくぼくは、目を細めながらテレビの画面を眺めた。  そこでは、男の人と女の人が、枕かクッションらしき何かについて、熱弁をふるっていた。だが、ぼくにはよく分からなかったので、別のチャンネルを見てみることにした。  今度は、格好いい音楽が流れる中、女の人がビールを飲んでいた。どうやらこのチャンネルはコマーシャルのようだ。  ぼくはハイペースでチャンネルを変えまくったが、どれもあまり面白くなさそうだ。ぼくはリモコンを机に置くと、『仮面ロイダーチョコ』の袋をひっくり返して、チョコの残りカスを口の中に落とした。テレビを消そうかと思ったが、再びあの奇妙な静寂が訪れるのを想像して、何となくつけっぱなしにしておくことにした。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加