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木で縁取られた窓を上に上げる。木の擦れる音が大きくなると心地よい海風も部屋いっぱいに入ってきた。白の壁と赤レンガのコントラストが綺麗なこの街は、観光客が集まる景観豊かな景勝地だ。街中にある私の部屋の窓は、行き交う人を観察するのに最適な場所なのだ。窓の下は、街のメインストリート、奥には白い砂浜が映えるブルーの海が見える。夏が近づくとサーファーの姿が増えるので、朝起きて波に乗る人を数えていたのをよく覚えている。
その中に私の目を奪う小さな男の子が一人。お父さんに教わりながら、板に立ってはバランスを崩す瞬間は私もドキッとした。初めて波に乗った日は、男の子が必死にバランスをとる姿に胸が熱くなった。
小さい頃からこの景色を見て育ってきた私は、朝窓を開けるのが毎朝の日課になっていた。学校で自分から輪に入るのが苦手だった昔の私は、絵を描くことで自分の物寂しさを埋めていた。そんな私を連れ出してくれたのはエマという女の子だった。今は近くにいないエマも、私の心には残っている。コツコツと靴が道を歩く音が耳に入ってくる。
私は鮮明に彼女との日々を思い出す――
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