波の町

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 店内はランプの光に照らされて、昼間は明るく見えるようになっている。動物や人の人形や、魔除け、様々な生地でできた服や、カバン、コースターなど、多色の色で溢れる店内に、私の胸は高鳴った。その高鳴りはそう長く続かなかった。雑貨屋特有の甘い匂いが自分の鼻を刺激し始めたのだ。入って10分もしないうちに、新鮮な空気を吸いたい気分になってしまった。自然と体は扉の方向に向いた時、入り口横のショーウィンドウ近くの窓の小人たちに気が付いた。何かに引っ張られるように小人たちに引き付けられる。それに気がついたおばさんが、 「これはね、季節に合わせて小人の様子を変えたり、景色を変えたりして、みんなに楽しんでもらえたらと思っているのよ。そうそう。これから夏のために用意しているのだけど、何かやってほしいものはあるかい?」 私は、頭の中で最初に写ったのが、あさの海で頑張る男の子の姿だった。 「サーフィンする男の子!」 と答えていた。すると、あ!その手があったかと言わんばかりにパッと笑顔になって。 「そしたら、楽しみにしていてね」  とおばさんは私に言った。 「リア、そろそろいくわよ?」  エマは、すでに出口付近にいた。好奇心旺盛なエマは、次の場所に行きたくてうずうずしていた。私も、やれやれと思いながらも、大きな木の扉をエマより先に開けて店に出た。店を出るとき、おばさんのまた来てねという言葉が聞こえてきたが、振り返ってあいさつする余裕すらないほど匂いに酔いそうになった。扉を開けた瞬間にいつもの町の匂いが戻ってきた。 「今度はどこにいくの?」 「そうね、海なんてどうかしら?」 「じゃあ、行きましょう」  海とエマの口から出てきたときには私は心の中でやったと思った。海は私の好きな場所だ。もしかしたら少年と会ったりして。期待半分で返した返事は少しだけ声が高かったかもしれない。
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