0人が本棚に入れています
本棚に追加
音楽が聞こえる。
見知った顔たちが林葉の為に音を奏でる。
そこに、林葉だけがいなかった。
皆が悲痛な面を付けている中に、一人柔らかな笑みを浮かべている男がいた。
一年で一人だけの吹奏楽部男子部員は、同時に一年で、唯一のフルート奏者でもあった。
湯澤正孝は、代々ファーストパートの者が受け継いでいる金色のフルートを愛し、敬うように、まるで口吸いかのように、丁寧に音を撫でる。
湯澤からは、いつも錆びた鉄の臭いが漂っていた。
最初のコメントを投稿しよう!