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男性は訝しげに首を捻りながら、「しかし、おかしな話ですね。最近、この遺体の発見された場所で幽霊を見たなんて噂をする者がいるものですからね、興味本位の見物人が多くなってしまって、山道も荒らされてしまう始末です。遺体は今、科学捜査研究所に送られているそうなのですがね。それで私は、誰かが身元不明の死者の為に、花の種を埋めたのだとばかり……。そういえば貴方、ここで手を合わせてらっしゃいましたよね? 私はその姿を見て、事件を報道で知っているものとばかり思っていたのですが――」
私は咄嗟に男性の襟首を掴むと、力いっぱいに背面へ引き倒し、開けた崖の方へと勢いをつけて投げ落としていた。
崖の高さはゆうに三十メートルはある。助かる見込みなどはなく、警察には足を滑らせて転落したと処理されるに違いない。
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