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その時、辺りには誰もいなかった。私が此処へ訪れていることも、遺体が埋められていたことを知らない筈の私が手を合わせていたのも、あの男しか知らないことだ。
私は急いで下山し、山道入り口に停めた車へと戻った。あの男の停めた車が私の車が出るのを邪魔していたので、随分とてこずりはしたが、なんとか林道へ出て帰宅の途についた。
それから、私は過去の事件記事を調べた。あの山で女性の遺体が見付かったのは、その時から数ヶ月も前のことで、遺体は司法解剖され科学捜査研究所で身元や死因などが調べられているとわかった。それから数日の後、あの男の遺体も発見され、事件との関連性を捜査されていると報じられた。
この手紙は、被害女性の身元が割れて、容疑者となった私が逮捕起訴され、二人の人間を殺害した罪で、死刑判決を受けた後に書かいた新聞記者への真実の告白である。
〈了〉
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