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「どうしてここに来たの?」
「……見ておきたかったのだ。この目で、自分の罪の重さを」
なんのことを話しているのか私にはわからなかった。けれど、深入りするべきではないのだろう。彼がこれ以上は話しそうもない。
「紅花様、学校という場所は楽しいのか」
「……人による、かな」
「そうか」
私は学校よりも家でおばあちゃんと一緒にいた方がずっと楽しい。けれど、家にいるよりも学校にいた方が楽しいって人たちも大勢いるはずだ。
「最近、雨降らせないね」
青時雨は雨降のあやかし。天気雨や夕立は彼が原因であることが多い。
けれど、最近は雨がめっきり減った。身体が小さくなったことにも関係しているのだろうか。
「降らせ方がわからないんだ」
「え? だっていつも降らせていたじゃない」
青時雨は首を横に振って、ゆっくりと立ち上げる。
「それでは、また機会があれば」
黒い番傘を開き、窓から外に飛び降りた。
青髪と着物がたなびき、吸い込まれるように落ちていく。あっという間に見えなくなってしまった。
ふと見上げた空は雲ひとつなく、雨が降りそうもないくらい清々しい青が広がっていた。
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