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月光の誓い
「私がおとなしくしてたら、うまくいくと思ったんだけどな」
ぽっかりと、丸い月が浮かぶ公園で、あの子はぽつり、あの日の種を明かした
「私、お母さんが好きだから、ずっと一緒にいたかったのに」
どうして、そんなに、
疑問はつきないまま、向かい合って手を合わせる
「いただきます」
「あの人がね、ご飯のとき、いつも、手伝いなさいって言うの」
「お母さんはそんなこと言わなかったのに、言われて、手伝っても楽しくないのに、」
あの子は不満げだけど、元々、子供が得意じゃない私よりは、よっぽどましだろう
「そんなことないよ、私はお母さんのほうがいい!」
「ねえ、また、帰ってきてもいい?」
「いいけど、今度来るときは、ちゃんと伝えてからね」
「わかった、お母さんが言うなら、そうする!」
あの子は言いたいことだけ言って、ご飯を食べて、すぐに寝てしまった
まるで、あの日みたいに、
もう、そんなだから、利用されるんだよ
思いつつ、膝にのせられた、頭の重さに笑みがこぼれる
この子がどうして、こんなに必死なのか、
私が彼を忘れられる日がくるのか、
それは、わからない
でも、彼と会うことは、もうないだろう
この子もいつかは、私の手を離れるかもしれない
それでもいい
せめて、この子が私を覚えていてくれる間は、このままでいよう
柔らかな髪を撫でながら、ひとり、誓いを立てると、月が遠くでつるりと光った気がした
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