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2時間程経った頃、佳奈は流石に厭きて来て居間のテレビを点けた。
その刹那…。
佳奈の背後に在る壁から、白くて長い手が佳奈の肩を掴んだ。
「あれ~? 沙樹じゃない?」
隆を駅まで迎えに行き、遅めの朝食を喫茶店で採っていた時、沙樹の高校時代の友人が沙樹に声を掛けて来た。
「久しぶり~」
互いが懐かしいねと、手を握り合うと友人が隆にも挨拶をする。
「なあに里帰り? そういえば、子供産まれたって前にハガキ寄越してくれたけど、何処? あなたに似て可愛いでしょうね」
「引っ越して来たのよ。子供が喘息になって、空気の良い田舎に戻って来たって訳。今お留守番してるわ。さっき旦那がこっちに着いたから、お迎えついでに遅めの朝食」
「そうなの? 今度遊びに行って良い? 沙樹の子供にも逢いたいし」
「ぜひ来てよ! 今住所メモるから」
沙樹は鞄から手帳を出して、紙を切り離し新しい住所を書き込んだ。
それを覗き込んだ友人が息を呑む。
「やだ…まさかあの住宅の?」
口に手をあてた友人が蒼白になる。
沙樹は眉間に皺を寄せて、今朝の佳奈が云っていた事を思い出した。
「何か有るの?」
「有るの…て、そうか余りニュースにならなかったんだよね」
「事件でも有りましたか?」
黙っていた隆が口を挟んだ。
友人は困った様子で、沙樹を見る。
「家に居た筈の女の子が、行方不明になって…次の日に庭で亡くなっていたのよ。首を絞められて、犯人はまだ見つからないんだけど、その後母親が後を追って」
沙樹がガタンと椅子を鳴らして立ち上がると、店内の客が一斉に振り返った。
「その家って」
「確か木造平屋の古い家。あの辺にしては、随分と古い方よ? 周りはみんな建て替えとか新築だらけだから」
「死んだ女の子…どんな子なの?」
「え? 髪の毛の長い子。こっちの新聞に載ったから…近くだし覚えてるわよ? え? 沙樹?」
沙樹は鞄を手に急いで喫茶店を飛び出した。
びっくりした友人に隆が謝罪し後を追う。
「偶然じゃないのか」
助手席に乗り込んだ隆が、シートベルトをして沙樹を宥める。
「今朝佳奈が変な事云ってたの」
「何を」
「髪の長い子が居る、この家変だって。夜中に佳奈の頭を撫でられたらしいんだけど、私夢でも見たのかと思って、不安になるから幻覚を見るのよって、云っちゃったわよ!」
隆は双眸を見開き、息を呑み込んだ。
「佳奈!」
沙樹は玄関の戸を開けて居間と隣室、浴室とトイレを見て回った。
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