あの子がいなくなった。

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私は鏡の前で入念にチェックをした。 新しい制服はちゃんと採寸通りにつくってもらった。 もう、背が伸びることはないだろうから、大丈夫。少し、スカート丈は短く。 春休み入念に瞼をマッサージして、二重を作った。コンタクトを入れて、髪は丸めシルエットのショートボブ。眉の形まで丁寧に作って、話し方を変えた。 常に笑顔でいるように。 「大丈夫。」 スクールカーストの頂点にはなれない。 頭も悪い。 運動もできない。 だから、同調する群衆になるのだ。 私はあの子を捨てた。 あの子はもういない。 周囲を伺っておどおどするあの子はもう、いない。 私は。 鏡の中、作り笑顔の目元が、あの子と同じように媚びていることに、気がついてしまった。 「大丈夫」 私はもう1度鏡に笑いかける。 あの子は、もう私の中にいない、
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